グレープアゲート/インドネシア産

グレープアゲート
グレープアゲートは、紫色を主体とした小さな球体が房のように集まった形で産出する鉱物で、その姿がブドウの房に似ていることからこの名前が付けられました。
鉱物学的には二酸化ケイ素(SiO2)を主成分とする石英系鉱物であり、微細な結晶が集合して形成されるカルセドニーの一種と考えられています。
ただし、一般的なアゲートに見られる縞模様(バンディング)が存在しないため、学術的には「アゲート」という名称は正確ではありません。
そのため「ボトリオイダルカルセドニー(botryoidal chalcedony: ブドウの房状の玉髄)」や「グロビュラーカルセドニー(globular chalcedony: 球状の玉髄)」と呼ばれるのが適切とされています。
市場では「グレープカルセドニー」や「グレープクォーツ」といった名称でも流通しており、コレクターやクラフト愛好家の間で広く知られる存在です。
産地のインドネシア スラウェシ島

つづいて産地です。
グレープアゲートの代表的な産地は、インドネシア西スラウェシ州マムジュ地域(Mamuju Regency, West Sulawesi)です。
この地域は海底火山活動やプレート沈み込み帯の影響を受けた複雑な地質環境を持ち、アンデサイト質の枕状溶岩(pillow lava)の空隙にシリカを含む熱水が浸透し、沈殿・結晶化することで房状のカルセドニーが形成されたと考えられています。
鉱物として広く知られるようになったのは2015〜2016年頃で、それ以前は河川に転がる漂石として発見されていました。その後、鉱脈が確認され、山奥のジャングル地帯で手作業による採掘が始まりました。
また、インドネシア政府の鉱物輸出規制(2014年)により、一時的に国際市場への供給が制限されたこともあり、その後の流通再開時に一層注目を集めました。
形状や特徴

つづいて、グレープアゲートの特徴です。
最も特徴的なのは、直径2〜20mm程度の小さな球が密集して房状になっている点です。これらの球体は微細な石英結晶からできており、内部では中心から外側に向かって放射状の構造が見られる場合もあると考えられています。このような成長様式はカルセドニーに見られる典型的な特徴のひとつです。
表面の質感は個体差があり、ビロードのような柔らかな光沢を持つものから、ややマットな印象のものまで幅があります。
色は一般的に紫色が多く、アメジストを思わせるものもありますが、白色・灰色・緑色・青色なども報告されています。特に緑色を帯びた個体は、粘土鉱物や他のインクルージョンの影響によると考えられています。
アメリカユタ州のグリーン川の西でも発見されていますが、産地がほぼスラウェシ島に限られるため、産出の希少性が高く、鉱物標本として高い評価を受けています。
写真で見るグレープアゲート

こちらは、グレープアゲート結晶の近影です。
淡い紫色やほぼ無色の小さな結晶が成長しています。
比較的大きめの結晶もあり、大きさに個体差があるのがわかります。

こちらは、ボコボコした板状のグレープアゲートです。
球体だけでなく、通常のアゲートのように平らに成長した部分もあります。

こちらには、平らな結晶が格子のように重なり合って成長しています。表面は、やはり小さな球体の結晶があり、複雑な環境で成長したことが想像できます。

こちらは複数のグレープアゲートです。ひとつひとつの大きさや色合いが異なっているのがわかります。天然石ならではの特徴ですね。
グレープアゲートの動画
インドネシア スラウェシ島産グレープアゲートの動画です。
こちらのグレープアゲートは、微細なものから1ミリほどの結晶が成長しています。表面はマットで、光沢はありません。
グレープアゲート / Grape agate
分類:珪酸塩鉱物
モース硬度:6.5〜7
劈開:なし
断口:貝殻状
光沢:ガラス光沢
結晶構造:六方晶系
比重:2.58〜2.64
産地:インドネシア スラウェシ島
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